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映画短評掲載履歴へ
映画短評
<評者自己紹介>(評者は、会社員でラメール開店以来の古いお客様のお一人です)
小学校からのムービーバフ(映画気狂い)。作品判断の基準は、面白度と製作者の生真面目度。
好きな作品は、「荒野の七人」「駅馬車」「カサブランカ」「用心棒」「ゴッドファーザー」「冒険者たち」(作品判断の基準です。
ショーン・コネリーの死を悼む
ショーン・コネリー様
あなたは1964年に「007は殺しの番号」、「007危機一髪(ロシアより愛をこめて)」で華々しくデビューされました。
当時中学一年生だった私にとって、あなたは遥か遠い国の憧れとして余りにも眩しく、真似をしようにもかなわない特別の存在でした。
続いての、「ゴールドフィンガー」、「サンダーボール作戦」、「007は二度死ぬ」迄のジェームズ・ボンドは素晴らしかったのですが、一本抜けた後の「ダイヤモンドは永遠に}では、動きに切れがなくなり、正直落胆していました。
007を離れてからは「メテオ」の老博士、「風とライオン」の族長役等、年齢の渋みを活かした重みを作品に与えていました。
その後、「薔薇の名前」で演技力を不動のものとし、翌年のアカデミー助演男優賞を得た「アンタッチャブル」で頂点に立たれたのかもしれません。
それ以降は洒脱な役が多くなり、インディージョーンズのお父さん役になったり、ロシア潜水艦の艦長になったり肝心要の役どころをひょうひょうとこなしておられましたね。
ここ10年以上、新作の話をお聞きしていなかったので、もう完全に引退されておられるものと了解していました。
いつか訃報は来るものと覚悟していましたが、今朝の新聞でご逝去を知り、50年以上の憧れをしみじみ思い出しています。
私のようなファンが今全世界で御冥福をお祈りしていると思います。
どうか安らかに御休みください。
今夜は、佳作ですがDVDでオードリー・ヘップバーンと共演された「ロビンとマリアン」であなたの魅力的な笑顔に再会したいと思います。
合掌
令和2年11月1日
(追悼記事の執筆は映画短評と同じ筆者です)
2020年10月
「TENET」(2020年 米)
新型コロナウイルスにより自粛により、9ヵ月ぶりの投稿になります。
この9カ月は当初映画館も休館となり、その後、座席を半分にして再開され、今月から映画館も普段通りに戻ったとは言え、海外の大作、新作は公開延期となり、邦画中心で私にとって魅力のある映画が少なく、映画館にもほとんど行かず、もっぱら自宅で録り貯めしていた旧作を楽しんでいました。
そんな中で、クリストファー・ノーラン監督の新作が公開されたので早速見に行って参りました。
粗筋はCIA局員の主人公(ジョン・ディビッド・ワシントン=デンゼル・ワシントンの息子さんです)が巨額資産家のこの世を終わらせようとする計画を阻止する、といった、007にも通じるプロットなのですが、その内容について、又、様々な展開については一度見ただけでは、ほとんど理解できませんでした。
テーマは時間遡行で、未来の自分と殴り合ったり、過去から来た悪役に人質を取られたり、未来から来た援軍に助けられたり、と相当頭が柔らかくないと、話についてゆくのに苦労します。
どうぞ頭の体操のつもりでご覧ください。
私はもう一度見に行くつもりです。
2020年1月25日
「パラサイト 半地下の家族」(2019 韓)
このお正月はスターウォーズ・シリーズが完結したり、寅さんが25年ぶりに帰ってきたりと大いに楽しみましたが、今回の作品も注目です。
既にカンヌ映画祭金賞受賞したとかで、アカデミー外国語賞の有力な候補になっているとか。
監督のポン・ジュノはこれまでも「殺人の記憶」や「ハンガンの怪物」等、主演のソン・ガンホと組んで話題作を発表してきました。
今回のテーマは韓国の格差社会に注目し、半地下の家に住む貧乏家族と、豪邸に住む大金持ちの家族を描いています。
ソン・ガンホが父親の家族は宅配ピザのケース作り生業とする、妻と息子、娘の4人家族だが、その息子が豪邸に住む高校生の家庭教師のアルバイトを始めたことから、父は運転手、母は家政婦、娘は絵画教師として、全く別人のふりをしてこのお金持ちに寄生してゆきます。
金持ち家族がキャンプで留守にしている晩に、貧乏家族は豪邸でくつろいでいると、母親の前任の家政婦が訪ねてくる処から、話は怒涛の如く展開してゆきます。その展開には賛否両論あると思いますが、上級国民の生活と、寄生せざるを得ない下級国民の生活との対比をユーモラスに、しかし辛辣に描いてゆきます。
特に、ラストのエピローグはどうしようもない格差社会を抉り出していると言えましょう。
今回は息子役のチェ・ウシクの演技力に注目してください。
2019年10月29日
「ジョーカー」(2019年 米)
公開以来興行収入第一位が2週続いている話題作です。
ご存じバッドマンシリーズの悪役であるジョーカーが主人公で、これまでジャック・ニコルソン、ヒース・レジャーと言った癖のある役者が演じてきましたが、今回はホアキン・フェニックスが前任に勝る、鬼気迫る演技を見せてくれます。
母子家庭で、母親の介護をしながらピエロを演じる喜劇役者アーサーは緊張すると笑いが止まらなくなると言う奇病を患っており、周囲から孤立した生活を送っている。
あるきっかけで殺人を犯したアーサーは、暴力に目覚め、狂気のカリスマ犯罪者へと変貌してゆく。
一方、アーサーの漫談を認めたナイト・ショウの司会者(ロバート・デ・ニーロ)は自身のショウのゲストにアーサーを呼び、アーサーは自分をジョーカーと紹介する様依頼し、ショウが始まると・・。
後にバッドマンとなるブルース・ウェインも登場し、ウェイン家とアーサーのつながりも一つのエピソードになっています。
格差社会の落ちこぼれを描き、その狂気により誕生するこおジョーカーは他2作を凌いでいると思います。
又、クリームのホワイト・ルーム等名曲を誠にうまく使っている点も見逃せませんでした。
監督のレッド・フィリップスはこれまではおバカコメディの「ハングオーバー」シリーズを撮っていたそうですが、大した実力監督が出てきたものです。
年9月5日
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」(2019年 米)
いよいよクエンティン・タランティーノ監督第9作目が公開されました。
第1作の「レザボア・ドック」以来、毎回楽しませてくれた監督ですが、前作の「ヘイトフル・エイト」は、彼の悪趣味な点が全面的に出ていて、期待外れでした。
今回も多少心配して見に行ったのですが、ブラッド・ピットとレオナルド・ディカプリオと言う2大スターを擁して、1969年の限られた時間を当時の風俗、音楽、映画業界をリスペクトした上で、パロディ化して、楽しめる作品になりました。
テレビでは売れたけれど、最近は映画で悪役ばかりのディカプリオ、そのスタントマンで長年の親友のブラピのいわばバディ・ムービーなのですが、シャロン・テート事件を絡ませ、更に、スティーブ・マックィーン、ブルース・リー(勿論、そっくりさん)迄登場する奔放な筋立てになっています。
シャロン・テート事件とはロマン・ポランスキー監督の新妻であったシャロン・テートがハリウッドでオカルト集団に惨殺された事件ですが、そのシャロン・テートを演じるマーゴット・ロビーが無邪気で可愛らしく演じており、事件を知る我々には、誠に切なく見えてきます。
タランティーノらしく、相当練り上げた結末は明かせませんが、見終わって落ち込むようなことはありません。ディカプリオは売れなくなって、更にセリフまで忘れて落ち込む役を一生懸命演じていますが、10歳以上年上のブラピの余裕ある演技が好対照でした。
2時間41分と長尺ですが、あの時代を思い出せる人には長く感じないのでは、と思います。
2019年8月26日
「ピータールー マンチェスターの悲劇」
(2018年 英)
近代の各国の歴史は趣味をお持ちの方でもない限り、中々勉強しにくいですが、映画はその点2時間位で歴史のエピソードを勉強できるので便利だと思っています。
例えば、「北京の55日」では清王朝の末期症状を、「ラスト・エンペラー」は清王朝のその後を壮大なスケールで教えてくれます。
今回の作品で扱った事件も日本人の殆どの人が知らない事件だと思います。
1815年の英国はナポレオン戦争に勝利したが、国民の大多数は多額の戦争負担により貧困に喘いでいた。
マンチェスターの急進派活動家は、民主主義を要求する著名な演説家であるヘンリー・ハントをセント・ピータース広場の政治集会に呼び、1819年に6万人が参加する選挙法改正の大規模な集会が行われることとなった。
一方、王政、貴族が徹底的に殺害されたフランス革命を目の当たりに見た政府高官、資産家はかかる民主運動が革命に繋がるのを恐れ、かかる集会を弾圧すべく義勇歩兵団を送り込み、更に治安判事の命を受けた騎兵隊が騒動を鎮めようと群衆に向かうことにより、逃げ場を失った民衆は18名の死者と多くの負傷者を出すことになった。
作品はウォータールーの戦場から命からがら逃げかえる若者の帰郷から始まり、騒動の後に事件を目撃した新聞記者により事件が英国全土に報道される処で終わります。
日本では文化文政の頃に英国では民主主義運動が行われていたのですね。フランス革命のギロチンが如何に英国貴族に不安を与えていたかとか、色々勉強になりました。